2018/07/16
【特集】「総括・日本の動物」

ついに海洋堂の新動物ブランド「WILD RUSH 真・世界動物誌」がスタートしました。待望の世界の動物シリーズということで、期待も高まります。しかし、世間の(というかネット上の)盛り上がり具合は「日本の動物」シリーズ復活のときよりも落ち着いているような・・・。フレンズたちの力も借りて、なんとかまたブームを起こしていただきたい。
一方で、新シリーズ発足ということはすなわち、旧シリーズである「日本の動物」シリーズの終焉を意味します。
公式な明言はされていませんが、「カプセルQ日本の動物」が3年前の「別巻」を最後に新シリーズが発売されていません。

ちなみにラインナップの最後の「アルゼンチンアリ」はアニマテイルズNo.314、これに加えて週天の50種+αもあるわけですから、400パターン近いフィギュアが松村さんによって作られたことになります。終わってしますのは残念ですが、日本の動物はもうやりきった感があるのかもしれませんね。

もしかしたら将来、ひょっこり再開するかもしれませんが、ここで一旦シリーズを振り返ってみましょう。
【おさらい】
・日本の動物シリーズはすべて松村しのぶさんが造形・解説を担当
・販売体形は「チョコエッグ」(卵型チョコ)→「チョコQ」(卵型チョコ)→「カプセルQ」(ガチャガチャ)
・(このサイトでも曖昧ですが、)海洋堂はあくまで「フィギュアの企画・造形・製造」を担い、販売元はフルタ(チョコQ)、タカトミ・すばる堂(チョコQ)であるため、時々ネットで見かける「海洋堂から発売されたチョコエッグ~」という記載は厳密には間違い。ただしカプセルQの販売元は海洋堂。
 
日本の動物1(99年)、日本の動物2(99年)、日本の動物3(00年)
チョコエッグ前半戦と呼ばれる1弾から3弾。フルタから発売。ガレージキットメーカーであった海洋堂にとって食玩サイズの組み立て式フィギュアはノウハウが無いため、中国の工場と協力して手探りで始まりました。このような技術的な問題があるため、当初は「いかに似せるか」というより、「いかにらしく見せるか」を重視していたようです。
ブームが始まりますが、チョコの溶けてしまう夏は販売が出来ないので一旦生産終了。
ちなみに、フルタと海洋堂の契約は「原型1個に対する報酬○○円」という契約ではなく、「ひとつ売れるごとに○○円」というロイヤリティ制だったため、売れれば売れるほど海洋堂も儲かるというシステムでした。
日本の動物4(00年)、日本の動物5(01年)、パルコ限定ヒメネズミ(01年)、クラシック(02年)
満を持して発売された4弾を皮切りに、バカ売れするチョコエッグ。クリアパーツやグラデーションを駆使した塗装など、クオリティはぐんぐん上がっていきます。社会現象となり、ヒメネズミ騒動などもありました。この時期のフィギュアが今でも安価で入手できるのは、単純に流通量が多いからでしょう。
そしていろいろな騒動が勃発し、海洋堂はチョコエッグとの縁を切ることにしました。チョコエッグは現在でもマリオやディズニーをテーマに販売されていますが、今日のチョコエッグの地位には海洋堂の尽力があったことを忘れてはいけません。
 
日本の動物6(02年)、日本の動物7(03年)日本の動物8(04年)、日本の動物9(04年)
日本の動物スペシャルエディション(04年)、日本の動物10(05年)、日本の動物11(06年)
フルタとの契約を解消した後、海洋堂がパートナーに選んだのはタカラ(現タカトミ)でした。おそらくこの頃に、チョコエッグ時代の続きであることを明示するため、「アニマテイルズ」というシリーズ名が付いたようです。フィギュアのクオリティは当初の理念である「らしく見せる」を残しつつ、どんどんリアルになっていきます。
しかし、残念ながらそもそもの食玩ブームが06年ごろに下火になり(ブラインドパッケージで購買欲を煽る販売体形も一部問題になったようです)、日本の動物シリーズはブームとともに終了したかのように思われました。
   
日本の動物Ⅰ(13年)、日本の動物Ⅱ(13年)、日本の動物Ⅲ(13年)、日本の動物Ⅳ(13年)
日本の動物Ⅴ(14年)、日本の動物Ⅵ(14年)、日本の動物Ⅶ(14年)、日本の動物Ⅷ(14年)
日本の動物別巻(15年)
海洋堂が立ち上げたガチャガチャのブランド「カプセルQミュージアム」で、日本の動物が7年ぶりに2年間だけ復活しました。同時に発売された恐竜モノの「恐竜発掘記」が食玩時代の「ダイノテイルズ」とのつながりが無いのに対し、こちらの日本の動物はシリーズのナンバリングがローマ数字に改められたものの、フィギュアそれぞれにはチョコQ時代から続く番号が振られており、正当な後継シリーズでした。
これまでの大きな違いはシリーズが生息地ごとに分けられている点。これはラインナップが当時よりも少ないため、テーマを持たせる必要があったからでしょう。また、金型の数を増やさずにラインナップを増やすために、カラバリ(カラーバリエーション)の多用もしています。
再開した日本の動物シリーズでしたが、中国の人件費高騰により当時ほどのディテールが表現できていないものもいくつか。チョコエッグ1弾が「原型の表現」と「量産の技術」の乖離による苦悩があったでしょうが、今回は限られたコストで製品化するために、あえて技術を抑えいるといったところでしょうか。
「別巻」を区切りに新作は発売されていません。
なぜ新作を出さないのか?と僕は思っていましたが、17年7月の展示会でこの展示を見て考えが変わりました。
フィギュアin千葉のレポのページより一部掲載。
今までの日本の動物シリーズを生息地域に並べた展示です。こんなにも立体化されていたとは。そしておそらくこれでも全てではない。
最初に書きましたが、もうやりつくしましたね。確かにメジャーな生き物は何度も立体化されています。

松村さんはどこかのインタビューで、「製品を通してお客さんが動物に興味を持って、動物園に行ったりしてくれるとうれしい」的なことを話していたと思います。原型師になる前に環境保護団体に属していた松村さんらしい考えです。
これまでの流通量を考えれば、その役目は全うしたのではないでしょうか?現に自分がそのひとりです。

そういう意味では、再びオタクたちの意識を動物園へ引き込み、多くの動物園とのコラボしている「けものフレンズ」とは波長が合ったのでしょう。今度はネタ切れになるなんてことはありえません。10年、20年と続くシリーズとなることを願いながら、たくさん回して応援することにしましょう。
 
   
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